会所越え・その2

ここからも別段楽な道のりではないが、道の痕跡が続くだけでも心理的に随分違う。常にレベルを心がけ、道をトレースしていく。道の左手、やや太めの木に最初の赤テープ。これは先月僕が付けたものだ。
道は目指す板小屋日向の尾根に乗りそうで乗らず、すぐ下を巻いていく。ときどき失いそうになるが、一度通っている道ほど心強いものはない。この先、ヘアピンターンがあるところまでほぼ1kmほど、道を失わないように進んでいく。空身で通ったときに比べ、自転車があると倒木の乗り越えがしんどい。右が落ちている斜面なのがわずかな救いで、右肩担ぎで切り抜けていく。ときどき枯死した笹ヤブを通るが、30cmほどの道幅だけは空間が空いている。獣道とは違う気がする、本当に「気がする」だけなんだけど。
レベルで進む方向に不安を覚え、「ここでターンだったっけ?」とオカネ君に尋ねる。彼はGPSを確認して冷静に「もう少し先」。僕のヤマレコは前回のデータを見ながら歩くやり方がわかっていないので、うまくラインを重ねて見ることができない。ただ、ターンするところのイン側の木にテープを巻いてあるはずなので、やっぱりここは違うと前進する。ちょい上とちょい下の両方の径が見えていて、一度通ったくせに不安なことこの上ない。本当にこの先、完登(いや完降)できるのだろうか?
しばらくで2個めの赤テープ。その先、径が小さな尾根を越えるあたりで右下に下る径が見える。赤テープ、ここが最初のタイトターンだ。
この区間は前回間違えたところで、右にターンし下っていくと、しばらくで左に切り返す。径の痕跡はかなり乏しく、五感を全開にして気配を感じとっていく。左ターンの先にもテープ。ターンはこの一組だけなのだが、見失うと、斜面すべてが道に見えてきて、かなりきわどい。
そして次ぎに来るのが第2の難所、トラバースだ。「振り子トラバース」みたいに素敵な命名をできないのがサイクリストの悲しいところだが、「え、ここ横断するの?」と言いたくなるようなきわどいトラバースが待っている。空身の時に手を使ったくらいだから、自転車を持って通過するのは……オススメできない(笑)。
(続く)